【とみやま地名探訪】富山(とみやま)

南房総には、千倉・三芳など縁起のいい文字で地名を表す所があり、富山もその一つと思いがちですが、富山はこの地域では最も古い由緒ある地名の一つといえます。
古来、阿波国からやってきた斎部氏が安房国を開いたと記録に記されていますが、その斎部氏を率いたのが、古代神話にも登場する天富命(あめのとみのみこと)で、この人物は安房開拓の祖とも言われています。この天富命の終焉の地が天富山(あめのとみやま)と言われる現在の富山(とみさん)にあたります。
富山の名を有名にしたのは『南総里見八犬伝』で、作者の滝沢馬琴は、富山を「とやま」と書いています。「とやま」と言えば現在では富山県を指す呼び名ですが、こちらは元々は「外山」と書かれていたのを縁起のいい名として中世に富山にしたそうで、当地の富山(とみさん)の方が古く、由緒ある地名だといっていいでしょう。
昭和三十年、岩井町と平群村が合併した際に由緒ある富山が地名として復活しました。新町名の名付け親は高橋渉初代議長であったと「広報とみやま」に書かれています。
富山登り口にある福満寺には、「おもくともかるくのぼれや富山へ四方浄土を見るも極楽」と書かれた歌が残っています。架空の話とはいえ、この地に籠ったという伏姫や八房をしのぶ歌ともいえないでしょうか。
次回の【とみやま地名探訪】は「久枝」です。お楽しみに!
(徳永忠雄)

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