後ろ向きの薬師様

後ろ向きの薬師様

 平久里下に「長藤薬師堂」という小さな古寺があります。今は訪れる人も少なく地元の人が大切に守っている寺です。薬師堂は、病気やケガをしたときに平癒を祈願するお寺で、各村ごとにあったようです。

 今から60年ほど前この地域で民話を集めていた若林清さんは『民話百話』という本の中でこの薬師堂の不思議な出来事を紹介しています。

 ここの薬師様は眼光鋭く特に目の神さまとして村人の信仰を集めていました。ところが、この薬師堂の南側の真向かいにだらだら坂と言われる長い緩めの坂があるのですが、この坂でよく荷を積んだ馬が足を折ってケガをする出来事が何度も起こってしまいました。村の人は集まってなぜだろうと言い合っていました。罰が当たったんじゃないだろうかという人もいました。その時、ある村人が、薬師様の目が南を向いているせいじゃないかと言ったのです。薬師様の目は鋭く強いものでしたから、そうかと納得した村人は思いきって薬師様を北向きにしてみました。つまり後ろ向きにしてみたのです。するとどうでしょう、それからというものこのだらだら坂で足を折る馬がいなくなったのです。村人は、この薬師様はなんと霊験あらたかなんだと驚きさらに信仰が篤くなったと言われているそうです。目の御利益があるためか近くには眼鏡橋という石組の橋もあったのですが埋もれてしまったようです。この薬師堂の天上には素晴らしい絵が升の中にいくつも描かれていて信仰を集めた様子がうかがわれます。

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